瓶詰めの春

2015年09月23日 09:57
君の影を見て 犬が吠える
人間のそれではないからだ
世俗から離れた
高貴な君に相応しい
 
 
瓶の中の季節は
二度とやってこない
 
 
その黒髪の匂いを
盗むように嗅いだ
歯が軋むほどに甘く
角砂糖落とした 紅茶に似ている
 
 
瓶詰めの季節は
手のひらの中で
移り変わることなく
永遠に暖かなまゝ
時が止まっている
 
 
君は男を
好きになることなんてあるのかい
君みたいな清楚な子がだよ
おれには想像がつかない
どんな声を出して
誰の名前を呼ぶんだい
 
 
瓶詰めの春 
そこには今朝 アケビの花が咲いたが
君のつぼみは かたく閉じて
寸分の隙も見せない
 
 
君の春は 瓶詰めの中
打ち付けて壊してやろうか
薄い硝子の膜(まく)
おれは野蛮な狼のように
せわしなくその周りをうろつき
守るふりをしてよだれを垂らし
ひたすらに待ち焦がれるのだ 
 
あまりにも可憐な 君の春が
この世界に 解き放たれるのを
今か今かと待ち焦がれるのだった