いつのまにかふつうに

2015年08月19日 22:09
学校から帰ったら
お母さんが泣いていた
わたしの彼が死んだって
電話が来たんだって
お父さんの車で病院に行くと
へたくそなスイカわりみたいに
ぐちゃぐちゃになった顔で
あいつが白いベッドに寝ていた
卒業して免許を取ったら
お前を乗せてやるよと
言っていたくせに
絶対結婚しようと
言っていたくせに
あいつ 約束を破棄した
先に死んじゃった
わたしはしんじられないくらい
わぁわぁと泣いて
ごはんを食べられなくなった
みんながなぐさめてくれるたびに
もうあいつはいないのに
みじめになるだけだと思っていた
 
キスの数だけ
子どもができるとしたら
わたしたちはきっと
今ごろ 大家族だったよ
 
「卒業したらね」と
おあずけしていたものなんて
さっさとあげちゃえばよかった
 
だけどねとても残酷なのは
一番冷たいのは
誰でもない このわたし
時間が点滴みたいにわたしの中に
ぽたりぽたりと流れ込んで
ひとしずくが落ちるたびに
わたしの気持ちは
落ち着いていった
 
ごめんねわたし
だんだんと毎日
友達と笑うことが増えて
ごはんも普通に食べられるようになって
大学にいって
友達たくさんできて
バイトもかけもちして
卒業して就職して
ふつうに生きてしまった
 
 
わたしは明日 結婚します
わたしの明日からの
旦那さまもきっと
過去に愛した人はいるのだから
おたがいさまね
どうでもいいけど
 
 
わたしはわたし
元気に暮らすね
きっとそのうち家族も増えるよ
冷たいようだけれど
あいつは少し悲しくて
とても楽しかった思い出
時間が軌道を修正して
わたしいつの間にか
まったくふつうに生きてきてしまった
 
 
 
わたしは明日 結婚します