鉛筆

2015年04月18日 00:43

わたしはくずかごの中で死んだ

鉛の頭と木製のからだを携えて

MITSUBISHIの表記は欠けて

紙屑にまぎれて おそらくもう誰も

見つけることはできない

 

ランドセル、靴、帽子

あたらしい季節を唄い

あの子はよくわたしを

人にみせびらかした

 

かあさん

わたしを使って

泣かないで 笑ってみせて

とうさんと見た景色は

白黒の世界だけど 

綺麗に描けるでしょう

 

ねぇ お友達さん

わたしを使ってよ

大丈夫 今日は1日

あなたのそばにいるよ

難しいもんだいは

いっしょに考えようね

 

 

仲間との背比べが

とても楽しかったけれど

思えばあれは

残りの命を見せ合う

愚かな遊びだった

首だけになった

おじさんが寂しそうに

机の隅で笑っていた

 

わたしの鉛のこころは

時々鈍く折れて

銀色の粉が飛び散った

そのたび削られて

少しずつ 少しずつ

気付かないうちに

小さくなっていった

 

わたしは使い捨てられる

わたしは消耗される

みんなの笑顔と

紙の上の記録と 引き換えに

わたしのこころは

からだは削れていく

悲鳴を上げ  木片を撒き散らし

鮮やかな塗料のドレスを削がれ

丁寧に筆箱の中に収まっていたわたしは

そのうち選別されて

二度と学校に 行くことはなかった

 

誰かがわたしを手に取って

そのたびに新しくなるようで

どんどんわたしは終わりに向かう

 

誰かのからだに入って

毒になってやりたいと

思っていたけれど

それすらもかなわないまま

わたしのことはみんな忘れていった

むしろ初めから無かったもののように

くずかごの中でわたしは死んだ

 

工場が潰れた 

生まれたところは空き地になった

みんなが誇らしげに

「行っておいで」と送り出してくれた

あの場所も無くなった

あの子も大人になっただろうな

学校などもう とうに卒業したのだろう

 

11人のきょうだいたち 

おまえたちはどこへいった

みんなわたしとおなじように

くずかごの中で死んでいったのか