空想の恋人

2014年11月12日 22:20

わたしがずっと
思い描いていた
あなたはその人だった

あなたがわたしに
わたしがあなたに
はじめて触れるまでの時間は
とてもとても長く
季節は何度も変わって
またひとつ年をとった

薄い膜 手を伸ばして
隔たりの向こうにいる
あなたに触れた時
止まっていた時間が
一度に動き出して
何億年の空白を埋めていくように
全てが かがやきだすの

わたしたちはずっとこうして
昔から隣にいたのかもしれないと
錯覚するように
この街はあまりにも静かだ

控えめでいて
でも大抵のことは
見透かしたように
あなたはわたしの少し前を行く

一度愛を交わした
それだけであなたとは
もうずっとこうして
恋人でいた気がしている

あなたとわたしは
遥か昔から
つがいの小鳥だった
二羽のうさぎだった
二頭のイルカだった
神話の中のドラゴンだった
ひとつの星座だった
世界のはじまりだった

わたしが静かに
思い描いてきた夢は
わたしが守っていた
大切なものは
全部あなたに
繋がっていたのかもしれない


この街は、今日という日は

あまりにも

静かだ