鏡の中の世界

2015年12月13日 00:28
お皿の上のご馳走を待ちきれないと
あなたがテーブルに上がった
なんてお行儀が悪いのかしら
ガタガタ揺れるランプ
脱げたローファー
散らばったコレクション
音を立てて 割れるグラス
 
 
バスルームで泣いていたわたしを見つけて 
優しくだきしめる あなたの口許から
ちらちらのぞく八重歯
 
このあと…どうする?
 
 
 
見上げる鏡の国
無限にこの部屋が続く
なまぬるいかたまりを
のどの奥が拒否していた
 
 
「帰らなくていいの?」
「うん…べつに」
「あぁ そう 彼氏は?」
「別れた」
「寂しいんでしょ」
「うーん…まぁ、」
 
「おれも」
 
 
明かりを消したら
体温のにおいが混ざり
あなたの声が耳を撫でる
まるで恋人同士みたいに
バカみたいなやりとり
 
指を絡めて
吐息で 愛の言葉をつづる
 
 
「いいの?」
「うん」
「大丈夫な日?」
「なにが?」
「いや」
「あぁ。うん、今日は」
 
 
ねむるため以外に置かれた
この部屋のベッドから
見上げる鏡の国
無限に繰り返す虚像
わたしはゼロ番目のわたし
あなたもゼロ番目のあなた
パノラマの世界
恨めしそうな
ふたりと目が合う
 
嘘ばかりの
愛の言葉を
舌先でなぞる
 
「いい?」
「や、それはちょっと」
「あっそ」
「やめてね」
「ん、」
「やめてよ」