魔法少女の胃袋

2016年09月25日 19:55
あなたはわたしに
君に食べられちゃいたいんだ
という話をしてから
真っ赤になってうつむいたまま
何も言わないでいるの
 
そうね わたしの胃袋が
宇宙の隅で渦を巻いている
ブラックホールだとしたら
あなただけというわけにはいかないね
MILKの春夏の新作、
意地悪なあの人、
駅前のショッピングモール、
糸くずや 電話の子機、
かわいくていとおしいもの以外にも
興味がなくてくだらないものまで
味わうことなく丸飲みしてしまって 
体の一部にしちゃうの
全部を溶かしてひとりぼっちになったわたし
宇宙の隅で迷子 寂しくて
渦を巻いて 泣いていたはずよ
 
だけどあなたは 
さいわい、魔法少女のわたしに
食べられちゃいたいというので
秘密の呪文でアップルパイに変えてしまうの
つめたいアイスクリームと一緒に
わたしの舌を悦ばせる
ただひとつの存在にね
 
あなたはさくっと軽やかな音とともに
みるみる ばらばらになっていって
星のかけらのようね
のどをゆるやかに撫でて
バターの香りと一緒に
わたしの胃袋に 
優しい重さをもたらす
 
 
そうね かわいいあなたを
わたしはいつか食べてしまうかもしれない
いいえ きっと食べてしまうわ
なんてかわいいわたしだけの人
あなたが隠してる願い
胸の裏まで見透かして
ひとあし先に 次の世界で
食卓の準備をして待ってる
 
あなたは よりによって
魔法少女のわたしに
食べられちゃいたいんですって
 
あいかわらず
かわいいこと言うのね