あなたになったら

2015年11月13日 22:34
「いい?ベッドが狭いというのは
とてもしあわせなことなのよ」って
彼女が煙草をふかして笑った
わたしにはまだ それがわからないの
 
 
わたしのお友達は
みんなかわいくて、いい子たちなの
ピンクにレモンイエロー 
オレンジやスカイブルー
みんな一緒に笑っている
カラフルな花束のようにね
わたしは彼女たち
一人ずつになりたいの
みんなかわいくて とってもいい子よ
 
だからわたしは沙希ちゃんになりたい
わたしはマユちゃんになりたい
わたしはあずちゃんになりたい
わたしはなっちゃんになりたい
どうしてわたしはわたしで
生きていかなくちゃいけないの?
ねぇなんで?
みんな、悲しいことをどうやって
コンビニのレシートみたいに
くしゃっと握って
そっとポケットにしまうことができるの
 
正しさと愛なら 尽きることはない
惜しみなくあげられるよ
だけど、ほら 
また誰かがどこかで
お砂糖ひとさじの
面倒ごとから逃げ出した
そしてそれをまた
別の誰かが拾って 
組み立てて壊す
わたしたちは
そんなゲームのなかで
生きている
 
 
 
「ベッドが狭いだなんて
わたしはごめんよ 
ぬいぐるみが置けないわ」
 
あんたはまだ子供ね と
笑われるくらいの距離が
わたしにはとても きもちがいいの
 
あなたはわたしがなりたいひと
ゆるやかにくちびる絡ませ
舌を奪いあう おだやかな午後
 
水音は 鈴のようにやさしい
かわいていた肌が
湿り気を帯びて
この部屋の空気がやわらかく
ゆがんだ