季節の死角で逢おうよ

2015年08月19日 22:05
遠い昔
あなたと待ち合わせた
5月17日の夜
それは遥か先の
途方もない約束だった
 
あれは誕生日まで
あと少しのこと
撃たれて落ちていく鳥のように
落下する紙飛行機のように
わたしはマンションのベランダから落ちた
通行人が叫ぶのを
空気より軽くなった体で
手すりに腰掛けて 見ていた
 
あなたは透明なわたしを
人間の女の子と
同じようにあつかうのね
ドライブへと連れ出してみたり
パンケーキをご馳走したり
手が触れると 目をそらしたり
 
悲しいことなんて
何もないはずだったよ
力失くしても
わたしを広い世界へと
逃がしてくれたことに
変わりはないでしょう?
 
わたしの透き通る体は
痛みを感じない
引き裂かれるはずがない
始まりも終わりもない
何もこわくないの
だからこそ
わたしが耐えられないことに
あなたが耐えられるはずなかった
 
鏡の中 髪が長いわたしは
絶望がよく似合う
雪の中を走り
どこまでも逃げて ここに来た
 
何も悲しいことなんてないの
力失くしても
あなたという存在は絶対
 
だからね もう泣かなくたっていい
わたしも 初夏の手前で手を振るよ
 
 
約束の日はもうすぐ
季節の死角で逢おうよ